
バイオリンで「飛ばし弓」と呼ばれる奏法——スピッカート。
私は26年前の初心者の時、プロのように軽やかに跳ねる音を出したいのに、「うまく跳ねない」「音が揃わない」と悩んでいました。
Xでも飛ばし弓は苦手と答える方が一定数いました。
バイオリン好きに聞きたいんですが、飛ばし弓(スピッカート)は得意ですか??🐶
— 🎻ねるねブログ♪ (@neruneblog) May 20, 2025
そんな私でも26年のバイオリン歴の中で、飛ばし弓についてたくさんの知見と経験で大人から始めたアマチュアバイオリン弾きにとっての最適な練習方法やコツがわかりました。
この記事では、飛ばし弓の
まで、まるっと解説。
初心者〜中級者まで、どんな段階でもヒントになる内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
「飛ばし弓」ってなに?
飛ばし弓の弾き方のコツをすぐ確認したい方はこちら→
バイオリンの飛ばし弓は、「スピッカート」や「サルタート」と呼ばれる弾き方のこと。
弓がポンポンと弦の上で跳ねるように動かして音を出すテクニックです。
ゆっくりの曲でも使われますが、主に速くて軽やかな曲のときに使われることが多く、弓の真ん中から少し先のあたりを使って弾くことが多い。
手でムリに跳ねさせようとせずに、弓そのものが跳ねる力(バウンド)をうまく使うことがポイント。
私は初心者の頃、この飛ばし弓は、”演奏を弾きまねするセコい裏技”と勘違いしていました。

”難しい場所を飛ばす”ってことかなと笑
スピッカート・サルタート・リコシェってどう違うの?
この飛ばし弓には主に3つのテクニックがあります。
その中でも、よく使われる3つを紹介。
・スピッカート
・サルタート
・リコシェ
ただし、ここから先はちょっと専門的な話になるので、正直、名前をしっかり覚える必要はありません。
「へえ、そんなのがあるんだな〜」くらいに読んでもらえればOK。
スピッカートとは?【動画で確認】
1音ずつしっかり人工的にポンポンと跳ねさせながら、弓を行ったり来たりさせて弾きます。
↓スピッカートを動画で実演(ゆっくりバージョン)
✔︎スピッカートを動画で実演(早いバージョン)
サルタートとは?【動画で確認】
とても速いテンポで行うことが多く、自然に弓が跳ねるようにして弾きます。弓の重さで弾くイメージ。
✔︎サルタートを動画で実演(ゆっくりバージョン)
✔︎サルタートを動画で実演(早いバージョン)
リコシェとは?【動画で確認】
弓を同じ方向に、2つ以上の音を連続して跳ねさせます。
✔︎リコシェを動画で実演(ゆっくりバージョン)
✔︎リコシェを動画で実演(早いバージョン)
飛ばし弓のテクニックを比較表で確認
テクニック名 | 跳ね方の特徴 | 弓の動き | 音の出し方 | よく使う テンポ | イメージ |
スピッカート | 1音ずつ しっかり 跳ねさせる (人工的) | アップ ・ダウンを 交互に | 弦に弓をつけて 音を出しながら 離す | 中くらいの 速さ | 「ポン、ポン」 と自分で コントロール する |
サルタート | 自然に 細かく跳ねる | アップ ・ダウンを 交互に | 弓を弦に 落として 跳ねるように 音を出す | かなり速い テンポ | 弓の重さで 勝手に ピョンピョン 跳ねる感じ |
リコシェ | 同じ方向の 弓で2音以上 を連続して 跳ねさせる | ダウン またはアップ のみ | 弓の流れの中で 何回も跳ねて 音を出す | 速め~とても 速い | 弓が 「トトトン」と 転がるように 跳ねる |
スピッカートとサルタートをはっきり分けないことも多い
実は、アマチュアや趣味でバイオリンを楽しんでいる人たちの中では、この2つをきっちり分けて弾くことはあまりありません。

これはスピッカートっぽいかな?

ちょっとサルタート気味かも
など、その場の音や気分で自然に使い分ける感じになることが多いんです。
たとえるなら”とんこつ醤油ラーメン”!
これは、ラーメンでたとえるとわかりやすいかもしれません。
「とんこつラーメン」と「しょうゆラーメン」はちがう味ですが、その中間の「とんこつしょうゆラーメン」ってありますよね。
でも、この「とんこつしょうゆラーメン」にもいろんなタイプがあります。
種類 | 味の特徴 |
醤油の味が強い とんこつ醤油ラーメン | 醤油の風味が主張される |
とんこつの味が強い とんこつ醤油ラーメン | とんこつのコクと旨みが際立つ |
さらには、とんこつしょうゆラーメンなのに「とんこつラーメン」として売っているお店もあったり。
これと同じで、バイオリンの演奏でもサルタート気味でも「スピッカート」と呼んでまとめてしまうことがあるんです。
弓をうまく跳ねさせるコツって?【動画で確認】
飛ばし弓では、自分でムリに弓を跳ばそうと右手に力を入れるのではなく、弓そのものの重さと、
自然にピョンと跳ね返る力(バネのような反動)
を使うのがコツ。
こんな感じ↓↓
そのためには以下のがポイント
①右手力を抜く
②弓を正確にもつ
③弓と弦の接触を斜め気味にする
これらを守ると、弓がよく動き、コントロールもしやすくなりますよ。
詳しく下記で見ていきましょう。
①右手の力を抜く
ひじや手首をガチガチに固めず、指でふんわりと弓を支えることが大切です。
力を抜くためには、ストレッチをしたりしてリラックスした状態を作りましょう。
②弓を正しくもつ【画像あり】
飛ばし弓がうまくできるようになるには、弓の持ち方がとても大切。
人差し指から小指までの4本の指で、弓をしっかりだけどやわらかく支えるのがポイントです。
ガチガチに力を入れずに、ふんわりとコントロールできるようにしましょう。

弓の持ち方についてもっとくわしく知りたい人は、『【弓の持ち方】バイオリンの右手の形を徹底解説!』もチェックしてみてください!
③弓と弦の接触を斜め気味にする
弓の毛を全部ベターっと弦につけてしまうと、弓がうまく跳ねなくなってしまいます。

そういうときは、弓を少し内向きに斜めにして使うと、跳ねやすくなります。
毛の一部だけが弦に当たるようなイメージ。

この「角度のつけ方」が、飛ばし弓をやりやすくする大事なコツ。
飛ばし弓がうまくなる練習方法は?
以下の手順で練習を進めてください。
①弓が跳ねる感覚をつかむ練習
②弓をゆっくり細かく動かす練習(跳ねさせない)
③弓をゆっくりから段々と早く動かす練習(跳ねさせない)
④右手の力を少しずつ抜いていく練習
④音階練習をする
以下で詳しく解説します。
①弓が跳ねる感覚をつかむ練習
はじめは、開放弦(左手で押さえずにそのまま弾く弦)を使って、弓をストンと落として自然に跳ねる感覚をつかむ練習からスタートしましょう。
どの弦から練習するかは、やりやすい弦からで大丈夫です。
オススメはD線(自分の目から見て左から2番目の弦)かA線(3番目の弦)です。
動画はA線の弦で弾いています。
✔︎弓を落とした時のバウンドの感覚を掴む練習動画↓↓
②弓を短くゆっくり細かく動かす練習(跳ねさせない)
次は、弓を下記の動画のゆっくり、しかし細かく動かす練習をします。
ここでのポイントは”決して弓を跳ねさせないようにする”事がポイント。
▶️(弓をゆっくり細かく動かす練習動画)
③弓をゆっくりから段々と早く動かす練習(跳ねさせない)
次は、はじめはゆっくりのテンポでスタートして、だんだんテンポを速くしていきます。
このときも、弓をわざと跳ねさせないようにするのがポイント。
▶️(弓をゆっくりから段々と早く動かす練習動画)
やってみると気づくと思いますが、弓を速く細かく動かそうとすると、右手にどんどん力が入ってきますよね。
けっこうキツいし、苦しいはず。
でもこの練習で、
「テンポが速くなると、手に力が入りやすいんだ!」
ということを、体で覚えることが大事なんです。
この感覚を知っておくと、あとで飛ばし弓がもっとラクになりますよ。
③右手の力を少しずつ抜いていく練習
次は、②でやった練習と同じように、ゆっくりしたテンポからスタートして、だんだん速くしていきます。
▶️(動画)
そして今度は、速いテンポのまま、少しずつ右手の力をぬいていく練習をしてみましょう。
▶️(動画)
動画を良く見てみてください。
力をぬいていくと、最初は跳ねていなかった弓が、だんだん「ポンポン」と少し跳ねてくるようになるはず。
うまくいけば、「おっ、跳ねた!」と感じる人もいると思います。
このときの感覚こそが、飛ばし弓の正しい感覚に近いんです。
①〜③の練習を全ての弦で練習しましょう
①〜③の練習を全ての弦で練習します。
・E線
・A線
・D線
・G線
それぞれの弦では感覚が違うので、個別に感覚を掴む必要があります。
④音階練習をする
今度は、音階(ドレミファソ…)を使って、ポンポンと弓を跳ねさせながら弾く練習をしていきます。
リズムをそろえて練習していくと、飛ばし弓に慣れてきますよ。
たとえば、ドレミファソラシドで練習すると…
▶️(画像)

▶️(動画)
次は、これを2倍の速さ(細かい音)でやってみましょう。
▶️(画像)

▶️(動画)
つまり、いつもやっている音階練習を…
・ふつうの飛ばし弓でやる
・2倍の速さの飛ばし弓でもやってみる
という2パターンで練習していくと、左手の指と右手の弓のタイミングが合いやすくなってきます。
飛ばし弓で音階を弾くときも、最初はゆっくりからでOK!少しずつ慣れていけば大丈夫です。
飛ばし弓のオススメの曲は?
おすすめの練習曲は、「新しいヴァイオリン教本 第3巻 ゴセック作曲 ガヴォット」。
リズムがはっきりしていて、飛ばし弓の練習にぴったりです。
弓のどこを使えばうまく跳ねるの?
飛ばし弓をするときは、弓のまん中から少し先のあたりを使うとうまく跳ねやすいです。

このあたりは「バランスポイント」といって、弓が自然にポンッとバウンドしやすい場所なんです。
もし跳びにくいと感じたら、弓のいろんな場所で試してみて、自分の弓が一番よく跳ねる場所を見つけてみましょう。
飛ばし弓でよくある失敗原因と、解決のヒント
飛ばし弓の失敗原因と対応策をまとめました。
・悩み①:弓が跳ねない…
・悩み②:弓が跳ねすぎてコントロールできない…
以下で詳しく解説します。
悩み①:弓が跳ねない…
✔︎原因:
・弓を持つ手に力が入りすぎている

✔︎対策:
→ 弓をふんわりと持つ

✔︎原因:
・弓の張りが弱い

✔︎対策:
→ 弓の毛がゆるい場合は、少し張ってみてください。

✔︎原因:
・弓の位置が悪い

✔︎対策:
→弓の真ん中〜少し先のあたりで弾いてみましょう。

悩み②:弓が跳ねすぎてコントロールできない…
✔︎原因:
・弓が軽すぎる(道具の影響)
✔︎対策:
→ 弓の種類やバランスを見直すのもひとつの方法です。
失敗しない弓の選び方については、『バイオリン弓おすすめ3選!初心者が後悔しないために』でまとめていますので、良ければ見てみてください。
✔︎原因:
・弓の先の方ばかり使っている

✔︎対策:
→弓の真ん中〜少し先のあたりで弾いてみましょう。

✔︎原因:
・手の動きが大きすぎる、または急すぎる
✔︎対策:
→ 手や腕は、小さな動きでなめらかに動かしてみましょう。
失敗しないためには、客観的に弾き方を見直してみましょう。
飛ばし弓を失敗しないためには、自分の弾き方を客観的に見直すことが大切。
スマートフォンで録画したり、信頼できる人に見てもらったりすると、自分では気づかない癖や改善点が見えてきます。
自分の動きをスマホで撮ってみる
自分の飛ばし弓で弾いてる姿を動画で見てみると、
・意外とひじが高すぎる
・手首が固い
などに気づけます。
人に動きをチェックしてもらう
「弓の重さがどう伝わっているか」
や、
「支点(どこで支えているか)」
を人に見てもらうと、自分では気づけなかったクセが分かります。
支点がズレていると、弓がスムーズに跳ねなくなることがあります。
これは、主にレッスンの先生に見てもらうと効果的です。
飛ばし弓に合った弓ってどんな弓?

飛ばし弓がやりやすい弓ってありますか?

この弓なら飛ばし弓が必ずやりやすい!という弓はこの世に存在しません。
大事なのは、自分に合っているかどうか、そしてバランスが良くて跳ねやすいか。
同じ弓でも、人によって合う・合わないがあるんです。
弓ってどうやって選べばいいの?
おすすめの方法は2つあります。
・日本の有名メーカーの弓を選ぶこと
→ たくさんの人に合いやすく、ハズレが少ないです。
・プロの先生に見てもらって選んでもらうこと
→ 自分の演奏や手のクセに合った弓を教えてくれます。
「道具で悩みたくない!」という人は、まずは信頼できるメーカーの弓から始めるのが安心。
弓の選び方についてもっと知りたい人は、『バイオリン弓おすすめ3選』の記事も見てみてくださいね。
弓の毛をメンテナンスしないと、うまく跳ねなくなるの?
バイオリンの弓には「毛」がついていますが、これをずっとそのまま使っていると、音がうまく出なくなったり、飛ばし弓がしにくくなったりします。
これは、毛がすりへって弦に引っかかる力が弱くなるから。
だから、定期的に毛替えをすることが大切なんです。
毛替えはどこでやるの?
毛替えは、自分でやるのではなく、弦楽器専門店でやってもらうのが安心です。
お店を探すときは、Googleで
「弦楽器 近く」
と検索してみましょう。
近くの楽器店が出てきますよ。
新しく毛をかえたばかりのときは、ちょっと音が出にくいことがあるので、音が安定して出るまで弾きこみましょう。
松ヤニで飛ばし弓のやりやすさが変わるってホント?
バイオリンの弓の毛には「松ヤニ」という粉をぬって、弦に引っかかるようにしています。
この松ヤニによって、飛ばし弓のやりやすさが変わることも。
たとえば、ちょっとネバネバしたタイプの松ヤニは、弦にしっかり吸いつくので、
弓が自然に跳ねやすくなることがあります。
反対に、サラサラした松ヤニ(パウダリータイプ)は、音のコントロールがしやすく、
初心者にもよく使われていいる。
でも、飛ばし弓をするためだけで松ヤニを選んでいいの?
私の経験からいうと、
松ヤニの「吸い付き」や「跳ねやすさ」は大事ですが、松ヤニは飛ばし弓だけのために選ぶものではありません。
・音の大きさ
・弾きやすさ
など、全体のバランスを見て、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
「どれを選んだらいいかわからない…」という人は、『バイオリン松ヤニの選び方とオススメ4選』をぜひチェックしてみてください。
まとめ:飛ばし弓上達のカギは「自然に跳ねる感覚」と「正しいステップ」
飛ばし弓は、見た目以上に繊細でむずかしいテクニック。
「力で跳ねさせよう」とすると、かえってうまくいかず、弓の重さ・角度・持ち方・道具の状態など、さまざまな要素が影響します。
特に初心者〜中級者の方にとって大事なのは、
です。
また、「自分の弾き方を動画で見直す」「先生に見てもらう」など、独学では気づきにくい視点を取り入れることも、上達の近道になります。
最後にひとこと
「がんばってるのにできない…」と感じたときこそ、視点を変えて、自分のクセや道具を見直してみましょう。
そして、どうせなら失敗しないように最短で上達したい!と思った方には、音楽教室でのレッスンがおすすめ。
▶️『音楽教室おすすめランキング』では、私が実際に調べて本当に良いと思った教室だけを紹介しています。
気になる方はぜひチェックしてみてくださいね。
焦らず、少しずつ、弓と仲よくなるように練習を続けていけば、きっとあなたの飛ばし弓も、軽やかに跳ねるようになりますよ!

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