質問があります。正月の番組で格付けチェックをやっていたんですが、高級バイオリンとされるストラディバリと入門用とのバイオリンがあまりにも値段の差が離れています。なんでこんなに値段の差があるんですか?教えてください。
いつもねるねブログをご覧になりありがとうございます。今回はこんな質問があったので答えていきたいと思います。
名前:ねるね
バイオリン歴:大人から始めて21年以上。オーケストラのプレイヤーとして18年活動。
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バイオリン初心者や未経験者で「ストラディバリウスってなんでこんなに高いの?」と疑問に思われる方は多いです。
私は21年前にバイオリンを始めて様々なバイオリンを見てきました。
ストラディバリのような高額な楽器と安物との違いが正直わかりませんでした。
バイオリンの質の見分け方ってとっっても難しいんです。
そこで今回の記事では、バイオリン未経験者でも正しい知識を得ればストラディバリがなぜ高いのかわかるようになるために「ストラディバリの特徴」からストラディバリと安物の楽器との違いまでまとめて解説します。
この記事を読めば「バイオリン未経験者、初心者の方がストラディバリについて語れるようになる知識」を学ぶことができます。
(ややこしいので整理:・ストラディバリウス→バイオリンの名前。・ストラディバリ→人名。ストラディバリウスを作った人)
ストラディバリウスについて
アントニオ・ストラディバリさんのプロフィール
アントニオ・ストラディバリは1644年〜1649年の間に現在のイタリアに生まれました。
ニコロ・アマティに弦楽器製作を師事し、その作品は現在600挺ほど世界各地に散らばっています。
イタリア、クレモナのサン・ドメニコ広場に工房を開き楽器製作者として大成功しましたが、しかしストラディバリの死後、その技術は後世に継承されず、今なお、クレモナではストラディバリの製造技術の研究が盛んに行われています。
ストラディバリが生きていた時代の日本
ストラディバリがバイオリンを作っていた時代に、日本はどんな時代だったかというと、なんと江戸時代の初期です。
将軍は生類憐みの令でおなじみの徳川綱吉です。
ちょんまげです。
今、そのときとほぼ同じかたちであるバイオリンを弾いているなんてロマンがありますね。
ストラディバリが生きていた時代のヨーロッパ
ヨーロッパでは重力を発見したでおなじみのアイザック・ニュートンとかが出てきた時代です。
音楽もそうですが、色々と文化や化学が変化の波で目まぐるしくなっていた時代でもあります。
バイオリンのストラディバリウスの特徴
ストラディバリウスは車で言うとF1の車に例えられます。
普通の楽器を使うわたしたちが使っているバイオリンは例えばセダンです。
なので、わたしは
ストラディバリウスは凡人が弾いても弾きこなすことはできず、一流のバイオリニストが弾いてこそ真価を発揮する
とよく聞かされていました。
ストラディバリ値段
現存する一番金額の高いもので45億円のバイオリンです。
ただ、これは2014年のオークションにかけられた最低落札額。
実際に購入されたものでの最高価格は、2011年に購入された1721年製「レディ・ブラント」の12億円です。
このようにストラディバリはぶっ飛んだ価格帯になっています。
ストラディバリウスはなぜ値段が高いのか
ストラディバリウスが高い理由は、
それによりレジェンド級のバイオリニストや有名人に所有されることで値段が上がっていった経緯があります。
経年変化で価値が上がるのはワインに似ていますね。
しかしなぜ木材が時間とともにパワーアップしたかというと、ストラディバリがめちゃめちゃあり得ないくらいバイオリンを丁寧に作ったから、とされています。
そのおかげもあって長い時代の変化の中で楽器がダメージを受けるが少なく、綺麗な状態で残り続けることができました。
ストラディバリ以外で丁寧にバイオリンを作る人はいなかったの?
その時代(17世紀前後)はバイオリンが流行り出した時期で、バイオリン制作はスピード重視で丁寧に作る人はあまりいなかったと考えられています。
ストラディバリが現代スマホを作るとしたら、スマホが中国の工場で量産されている中でひとりでめっちゃ精巧なスマホを作っているみたいな感じですね。
そのようなバイオリンの自然淘汰を経て現代にストラディバリウスだけ残ったと言えます。
ストラディバリは精巧な作りのおかげで長い時代の変化を生き残り、材質がレベルアップすることで値段がどんどん吊り上っていった
現代の新作バイオリンとストラディバリと比べてどっちが優れているか問題
2010年の実験では、23人のプロ演奏家が、3台の新作楽器と2台のストラディバリを評価したところ、
1位が新作楽器で5位がストラディバリだった。
2014年の再実験では、6台のストラディバリと1/100の値段の6台の新作楽器を10名の世界的演奏家が評価。結果、上位4位までにランクインした楽器の数は、新作楽器:ストラディバリが4:1であった
ストラディバリウスはほんとに優れているの?
という声が生まれ、2010年にアメリカのインディアナポリスで目隠しテストが開催されました。
この目隠しテストの要綱は、
✔︎被験者
・23人のプロの演奏家
✔︎評価基準
・音色
・音の伝達性
・演奏しやすさ
・演奏への反応
✔︎用意された楽器
・新作楽器1
・新作楽器2
・新作楽器3
・1715年製ストラディバリ
・1700年製ストラディバリ
・ガルネリ(ストラディと互角とされる楽器)
この結果は、、、
✔︎順位
1位:新作楽器2
2位:新作楽器3
3位:ガルネリ
4位:1715年製ストラディバリ
5位:新作楽器1
6位:1700年製ストラディバリ
なんとこのような結果になりました。
しかも、最下位になってしまったストラディバリウスは長年数多くの巨匠がコンサートやレコーディングでしようしてきた伝説の楽器でもあったのです。
さらに、この趣旨の実験が2012年にも行われましたが同じような結果でした。
そのことから、ストラディバリウスは演奏者からは高い評価を得ることはできなかたということが確認され、現代の製作者が作る楽器はストラディバリの作るバイオリンよりも凌駕しているとも言えることになりました。
この結果は賛否両論いろんな意見がありますが、わたし個人としてはオールド楽器の価格の吊り上げの歯止めがかかって、あらゆる演奏者にオールド楽器を弾くチャンスが増えればいいのになと思いました。
ZOZOの元社長、前沢さんが購入
ちょっと前に、ZOZOの元社長前沢さんがストラディバリを購入したことで話題になりました。
ストラディバリは資産として富裕層から購入されることが多く、この時期の前沢さんは他にも高額な絵画とか資産となるものを購入しまくっていて、ストラディバリもその一貫で購入されていました。
前沢さんが購入したのは、ストラディバリの作品の中でも黄金期にあたる
1717年製の「ハンマ」
という大変貴重なもので、購入金額は10億円とのこと。
この楽器がどういう扱いになっているのかわかりませんが、楽器は常に活動していないといずれ死んでしまいます。
優秀な音楽家にストラディバリは弾いていてもらいたいという思いはあります。
いずれにしても前沢さん、資産としての購入だとしても次元の違いを感じるお買い物です。
日本人で使っている主な人
【高島ちさ子さん】
✔︎製作年:1736年
✔︎愛称:ルーシー
テレビタレントでお馴染みの高島ちさ子さんです。
「12人のバイオリニスト」で全国をコンサートで飛び回っているエンターテイナー。
【諏訪内晶子さん】
✔︎製作年:1714年
✔︎愛称:ルーシー
クラシック最高峰のコンクールであるチャイコフスキー国際コンクールで、全出場者最年少第1位で優勝した国内外で認められるバイオリニスト。
この「ドルフィン」は自己所有ではなく日本財団から長期貸与されているものです。
【樫本 大進さん】
✔︎製作年:1722年
✔︎愛称:ジュピター
樫本大進さんは世界最高峰のオーケストラ、ベルリンフィルの第1コンサートマスターです。
オケ入団前はソリストとしても大活躍していました。
こちらも日本財団からストラディバリの貸与を受けています。
値段の高いバイオリンと安いバイオリンの違い
結論は安いバイオリンは作り方が大雑把で、高いバイオリンは精巧に作られている。
さらにオールドと呼ばれる大昔のものか量産品のものかの違いになります。
オールドの定義についてはこちらを確認する!
それらにより高いバイオリンは音質的に優れていて、安いバイオリンはショボいということになります。
以下で表にまとめました。
楽器の 種類 | 安い バイオリン | 高い バイオリン |
使用する 材質 | 安価なもの | 高価なもの |
作り方 | 量産品 | 職人ひとりで 手作り |
製作者 | 機械や たくさんの 作業員 | 巨匠 (レジェンド 職人) |
作られた 年代 | 新しい | 大昔 |
産地 | 様々 | クレモナ (イタリア) |
仕上げ | 塗料のスプレー | 何層もの ニスを塗る |
音量 | 弱い | でかい |
各弦の バランス | 悪い | 良い |
全体的な形 | 悪い | キレイ |
制作技術 | 大雑把 | 精巧、丁寧 |
根拠としては、こちらの文献を参考にしました。
横山真男著:ヴァイオリンの音色研究
小幡哲史著:スタディバリウスはなぜ高い?
また21年間バイオリンを続けてきた経験や知識に基づいています。
たくさんのプロ演奏家や楽器製作者との意見交換によるものです
一般的なバイオリンの値段相場
バイオリンの値段相場は各々のレベルによって違います。
例えば、車を買うとき一般的にF1のスポーツカーとか買わないじゃないですか。
それと同じでバイオリン奏者の置かれている状況や初心者プロかによっても求める値段は変わります。
こちらの表を見てください。
楽器の 値段 | 10万円以下 | 10万円〜80万円 | 80万円〜150万円 | 150万円以上〜 |
制作 方法 | 量産型 | 量産型or手工芸品 (一人の職人に よる手作り) | 量産型or手工芸品 (一人の職人に よる手作り) | 量産型or手工芸品 (一人の職人に よる手作り) |
素材 の質 | △ | ◯ | ◎ | ◎ |
主な 産地 | 日本製、中国製 | 日本製、中国製、 クレモナ以外の ヨーロッパ製 | ヨーロッパ製 、クレモナ製 | クレモナ製 |
特徴 | コストパフォー マンス最優先な ので 造りが大味な ものが多い。 | ヨーロッパの無名な 製作者の中古や レベルなしの楽器は この値段帯が多い。 日本国内や中国製の 有名な製作者の楽器 は中間マージンが 発生しなかったり 人件費が安価なので。 クレモナ製だと 100万円する ようなものがこの 値段で手に入る。 | ヨーロッパの 有名な製作者 の新作はこの 値段帯が多い。 | 有名な巨匠の 作品は性能も 良いが値段も高い。 オールドなどの 資産価値が入って いる物は性能以上に 値段が高い。 (ガルネリや ストラディバリなど) |
こんな 人に オススメ | 初心者 | 中級者 | 上級者 | 音大、 プロを目指す人 |
バイオリンの値段帯について詳しく知りたい!という方はこちらをご覧ください。
【知らずは危険!】初心者が購入するバイオリンの値段は?【選び方で失敗しない為に】
ストラディバリに代表されるオールドバイオリンについて
バイオリンのストラディバリウスはオールド楽器に分類されます。
オールドの定義
1800年が境目になり、1800年以前に作られた楽器がオールドになります。
とくにバイオリンの発祥地とされるイタリアのクレモナではこの時期、ストラディバリの師匠のアマティや同列に扱われることが多いガルネリなど伝説の職人が大活躍していました。
また、クレモナ以外でもたくさんの名楽器が製作されました。
オールド楽器は弾きこめば弾きこむほど音に味が出てくる
とされており、オールド好きは高い値段を払ってでも購入しようとします。
オールドと中古の違い
職人が手作りで作った作品は時間が経てばオールドとして扱われます。
これは何年にも渡って演奏者に受け継がれていき色んな奏者のクセを受け継いで楽器の音色にコクが出てくる現象です。(厳密によると1800年代以降に作られた楽器は【モダン】という言われた方をしますが。)
逆に、楽器の場合【中古】と言い表す場合どんなときのことを言うかというと、その楽器が量産品の場合です。
バイオリンの場合での量産品はどんなものかというと、Amazonとかネットショップで5万円以下ぐらいで売ってあるセットバイオリンとかそういう類のバイオリンのことです。
こういうバイオリンは使用すれば時間が経つと価値が下がっていきます。
なので
・オールド(モダン)→職人の手作り楽器
・中古→量産品(大量生産を目的に作られた楽器)
となります。
まとめ:ストラディバリウスも良いけど現代のバイオリンも同じくらい良い
今回はストラディバリについて記事を書きました。
わたしは今自分が使っているバイオリン(プレーメン・エドレフ2014)が最高だと思って弾いています。
現代バイオリンもストラディバリウスに全然負けていないですし、結局は自分自身が気に入った楽器であれば自分にとっての最高の楽器ではと思います。
以下まとめます。
✔︎ストラディバリのプロフ
・1664年〜1649年イタリア生まれ
・アマティに師事
・サンドメニコに工房を開く
・現存のバイオリンは600挺ほど。
✔︎バイオリンのストラディバリウスの特徴
・車でいうところのF1のスポーツカー:一流の奏者でないと使いこなせない
✔︎オールドバイオリンの定義
・1800年代よりも前に作られた手工品のもの
✔︎骨董品としての価値
・ZOZO元社長の前沢さんに代表されるように金持ちが骨董品や資産として購入する例がたくさんある
✔︎ストラディバリウスは数多くの日本人演奏者が使用している
✔︎2度にわたる実験の結果。ストラディバリより現代製作者のバイオリンの方が優れていることがわかった(賛否両論諸説あり)
以上です。
また、これからバイオリンを始めたいという方のためにはプロのレッスンの元で始めることをおすすめします。
そのための記事を書いていますので良ければのぞいてみてください。
【2022年最新!】音楽教室おすすめ18社を徹底比較|人気な理由を解説
このブログでは、バイオリンを中心に音楽が役立つ知識を発信していこうと思っています。
もしイイなと思ったら他の記事も御覧ください。
それではまたー
(完)
コメント
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